橋本氏の出自は「材料分析屋」である。長年。科学技術の真っ只中で生きてきたこともありサイエンスへの思いは人一倍強い。グループ展より一人で苦楽の全責任を負う個展に全力を注ぎ、敢えてそれを選択してきた橋本氏の厳しい性格も作品に姿を見せる。
 この橋本氏の創り出す緻密なまでの構成力は、一見メタリックな印象を受ける。しかしそれを凝視すると、ある瞬間その無機質は有機質に変貌する。その時、橋本絵画は現代社会とのコンプレックス(複合体)としての姿を現す。現代社会の構築物の持つ美と、そこに潜む不安感・不安定感のような雰囲気を醸し出しながらも、単なるサイエンスへの挽歌ではなく、未来への賛歌が画面から漂う。
 橋本氏の特技に「肖像画」がある。ある企業の月刊誌の表紙を十数年に亘って飾り続けている。橋本「肖像画」はまさに「有機質」の極致である。橋本氏の心の奥底をこの個展から探り出して頂ければ幸いである。
第5回橋本勝油彩展(東京銀座/シロタ画廊2006.12)パンフレットに寄稿していただいた文章