藤吉さんが私の教室へ通うようになって4年になる。
それ以前の彼女については全く知らない。
4年間といっても、内容的には他の仲間の10年分位の勉強をやったと思う。
それ位、制作に取り組む姿勢は積極的であり、意欲的である。
過去種々の創作活動も経験したとの事だが、絵を描いてみてやっと自分が求めていたものがこれであったと実感として知り得ましたと過日喜んでいた姿を思い出す。
 だから、今は無我夢中そのもので、描くことに理屈なく埋没出来る時間を大切にして日々筆をとっているようである。
その努力とか彼女の持っている豊かな感性が一緒になり、今は面白い程作品の質を向上させている。
彼女はカラーリストである。キャンパスの中に豊かな色彩が交叉し、響き合い、心地よいハーモニーをつくり出し、その画面は観る人々を一瞬現実から遊離させ、夢の世界へと導いてくれる。
描かれた画面は、何処迄も底抜けに明るく楽しい。しかし作品をよく観ると、表面の埋めつくされた明るさの裏側に、微妙な翳りがあることに気がつく。これは彼女の日常生活に於いてもしかりである。
 人前ではどこまでも賑やかに明るい人だが、それも人のためのサービス精神・気遣いであるような気がする時がある。
何故ならば、それは無意識のうちに彼女のまわりに漂うむなしさ、寂しさを瞬間的に感じた時、強くこの人の翳りをみた気がするからである。
恐らく彼女の過去の人生経験からくるものであろう。勿論、なんにもない人生なんて考えられない。或いは私の考え過ぎかも知れません。
しかし間違いなく、作品の上ではその明るさと翳りがほどよくミックスされて、極上のものが出来上がるとすれば、それ又良しである。
 今後が楽しみの彼女の初個展です。多くの人々に観て頂き、御批評頂ければ今後の制作上の糧となる事と思い、御高覧頂きますようお願い申し上げます。
1998年 福岡市新天町の「おいし画廊」で初の個展を開催した時の寄稿文